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16日の毎日新聞、「近聞遠見」で岩見隆夫が次のようなエピソードを紹介していた。さる6月23日、沖縄戦戦没者慰霊祭に参列するため沖縄を訪れた河野洋平衆議院議長は、ホテルの部屋に届けられた「沖縄戦新聞」を見てびっくりした。この「沖縄戦新聞」は、琉球新報社が、戦後60年報道の一環として、昨年7月から毎月一回発行しているもので、河野議長の目にとまったものは1945年6月23日の終戦の惨状を報じたものだった。
「沖縄戦 事実上の終結、牛島司令官ら自決、重傷者に青酸カリ、死ねない兵には銃向ける」などの見出しとともに、野戦病院の負傷者約1000人が命令で命を絶った場面が、看護要員だった女子高生(当時17歳)の証言で再現されている。
「強烈でした。戦争を知らない若い議員に是非とも読ませたい」と言って河野議長は50部買って帰京したという。
このエピソードは何を物語るのか。河野議長でさえ沖縄戦のことを殆ど知らなかった。そして、偶然目にした沖縄戦の光景に驚き、認識をあらたにしたのだ。
戦争体験者が日本から消え去る日も遠くない。しかしそれを危惧するには及ばない。戦争を知ることはいつでも出来るのだ。史実が保存され、それが包み隠さず我々の前に示されれば、そして我々が戦争を知る努力を怠らなければ。
戦争を体験しからといっても、その体験から学ぼうとしない限りその人は戦争を知ることにはならない。戦争の時代を生きたからといって、戦争の実態に関する情報に接しなければ本当の姿はわからないままだ。
3泊した北京のホテルで、毎日「抗日戦争」の記録フィルムがテレビで流されていることを知って驚いた。こんな画像を毎日見ていると、戦争を知らない中国の若い世代が日中戦争を常に念頭に置く事も頷ける。日本の右翼的な言論人たちは、これこそが反日教育であり反日感情の元凶だと言い立てるであろう。しかし果たしてそうであろうか。
私はこの映像を見ながら、史実を知ることの重要性を再認識した。抗日戦争を知らない世代にそれを画像で教える。その結果若い中国人の中に反日感情を持つ者が増えたとしても、それをもって意図的に反日教育を行っていると決め付けていいのか。むしろ日本の教育こそ日中戦争の事実を教えなさすぎるのではないのか。
被害を受けたものが恨みを抱くのは当然の感情だ。悪い事をしたほうがそれを思い出したくないのも当然だ。あるいは自らの誤りを認めたくないという感情を抱くのは当然だ。
しかし重要なことは、戦争の事実を客観的に知ることだ。自虐史観であれ皇国史観であれ、客観的な事実を知れば知るほど戦争の悲惨さ、不条理さに思いをめぐらさざるを得ないであろう。どのような史観にたった歴史教育であれ、戦争の史実を教える時は、残酷な場面を避けてはならない。人が人を殺し、人が人に殺されるということ、それが如何に理不尽であり人間性に反するか、そこから目をそらすような歴史教育は不完全である。そしてそのような事実をこそ、人をして反戦に至らしめる。まともな感性を持った人間であれば、反戦にならないほうがおかしい。
《参考リンク》
琉球新報 沖縄戦新聞 第12号
http://ryukyushimpo.jp/variety/page-128.html
沖縄タイムス 戦後60年平和ウェブ
http://www.okinawatimes.co.jp/sengo60/top.htm