2005年10月01日

ホワイトバンド攻撃に賛同することは誰を後押しすることになるのか

ホワイトバンド批判がにわかに高まっているようです。
いわゆるリベラルなブログでも結構批判されているところが多いようで、「ふむふむそういう見方があっても仕方ないかも」と思う反面、「ちょっと待てよ」とも思うわけです。

代表的な批判サイトはこちらのようです。
「ほっとけない世界のまずしさ」をほっとけない whiteband?
http://whiteband.sakura.ne.jp/
(以下、イタリック体は当サイトからの引用)

「社会的信用に欠ける主催者」とホワイトバンド(日本での活動)を批判するこちらのサイト、私の目にはこちらこそいかがわしい・・・と思えてしまうのです。
まずは、商品価格の内訳および使途として「PDF改訂前」「PDF改訂後」と表現、あたかも主催者側が意図的に何らかの隠蔽を図ろうとしていると「見る者」に思わせる表現です。
曖昧な表記になっているのはどこでしょうか・・・。
当初、明確に掲げられていて、曖昧に(というかひとくくり)されているのは次の項目です。

【貧困問題の解決に資する政策変更のための活動】
・政策研究・調査
・アドボカシー活動
・市民社会組織のネットワーク活動
・貧困の解消に向けた取り組みに関する啓蒙活動
 (地球市民教育・開発教育を含む)

改訂前には説明文のタイトルにさえなっていた【貧困問題の解決に資する政策変更のための活動】という言葉が消えています。
当サイトによれば「現在問題が指摘された事により、事務局によって改訂され曖昧な表記になっております」とのことですが、いったいどのような問題点が指摘されたのでしょうか。
「使途を明確にせよ」という指摘であれば私も理解できますが、この改訂を見る限りそのような指摘に答えたものではないようです。
問題点の指摘とは【貧困問題の解決に資する政策変更のための活動】に対してであったろうことは想像に難くありません。

【貧困問題の解決に資する政策変更のための活動】を好ましく思わない者は誰か。

売上の4割が流通費、3割が原価、残りの3割はNPOの活動資金に使われます
 ・活動資金と聞こえが良いが、団体の職員の給与、団体の備品購入費、飲食代など
  要は彼らが何にでも好きな様に使えるお金になります


ここも誤読を誘う表現です。「飲食代」-->何にでも好きなように使えるお金 というイメージの誘導です。「団体の職員の給与」「団体の備品購入費」は当然の経費でしょう。それともこの「団体?」が問題なのでしょうか。
この誤読を誘う表現に続けて以下の文章です。あたかも同列に「とんでもない行動」と印象付けます。

 ・具体的には地球市民教育の活動資金、市民社会組織の構築活動の資金などになります

・・・このことの何が問題なのでしょうか。【地球市民教育】【市民社会組織の構築】を好ましく思わない者は誰か。

 ・そうです。貧しい国の人々へは1円も行きません

これは当初から活動方針として表明されていたことであります。

この時点ですでに私の中では「かなり信用ならない」という認識ではあるのですが、以下、ホワイトバンドの問題点としてあげられている点についてわかる範囲で検証してみます。
(しかし、問題点の指摘といいながら俄然曖昧な表現が多いことに閉口します。)

ホワイトバンドの問題点

ピンからキリまで見事に揃った社会悪のグランドスラム。募金詐欺の可能性
 >・募金に見える、意図的にそういった印象を持たせているが募金ではない

  誤解する人はいるのかもしれないが、募金ではない(というか募金なんかではどうにもならない)ということは当初から表明されていることです。

 >・ホワイトバンドの価格が他国の同活動の3倍と異常に高い(Tシャツも同様)

各国の事情を踏まえていない指摘です。企業支援の活発な諸外国に比べてこの国はどうでしょうか。ホームレスの人たちによって販売される国際ストリート雑誌「ビッグイシュー日本版」の台所事情を思えば容易に想像できることです。諸外国との大きな違いは企業支援です。それを踏まえて活動資金を獲得するための価格設定と考えれば決して不当とはいえません。

 >・バンドの売上使途を曖昧にし錯誤するよう誘導している

これは先に指摘したように「曖昧にするよう」働きかけた者は誰かという問題も含め、「曖昧にされたもの」は何かを理解せねばなりません。 
曖昧にされたのは、当初明確に表明されていた 【貧困問題の解決に資する政策変更のための活動】 この1点です。

社会的信用に欠ける主催者
 >・NGOと無関係の「PR企業サニーサイドアップ」が(広報・製造・流通)の全般に渡り陣頭指揮を取り、金の流れをコントロールしているため信頼性が疑われる「参考ページ」

「参考ページ」にどんな問題発言があるのかと思いましたが、なんら問題と思える発言はありませんでした。
むしろ、

>「自社の資金を投入してホワイトバンドを中国の工場で生産する道筋をつけ
>20年かけて培ってきたノウハウや、人脈を活かして、PR戦略をプランニング」

積極的に活動支援を行いまた成功させた一企業であると見ることができます。「むさ苦しい一団が赤旗掲げてデモ行進しているようでは・・・」「もっとスマートに市民運動というものを展開していかないと・・・」などといわゆる「左翼」を揶揄するときによく言われることですが、いざこういうムーブメントが広がると俄然批判が沸き起こるという、非常に痛々しい国民性と言わざるを得ません。
ただこの活動(あるいは団体)が「左翼」だとは思えません。しかし以下の発言は「左翼的」と言えるでしょう。

>市民運動が高まって、要は政策を引き寄せて先進国の人たちの、
>まあ、先進国自体の政策が変わっていけば、本当に貧困克服のために、
>少しは大きな一歩になるんじゃないかっていう

いわゆる根源的な問題に言及しているからです。「アフリカ難民を救おう募金キャンペーン」に最も熱心な某テレビ局が決して触れない問題です。
ホワイトバンドのサイトではこう主張しています。
「必要なのはcharity(慈善)ではなくjustice(公正な負担)」
NGO news & message(より専門的な情報、より専門的なニュース)
http://www.hottokenai.jp/ngo/more.html
あなたに知って欲しい4つのこと
http://www.oxfam.jp/home/papers/downloads/payingtheprice_summary.pdf

 >・会計報告すらない“慈善”団体が共催に含まれている。

いわゆる論拠のない中傷ではないでしょうか。

 >・ホワイトバンド価格の構成が不自然で信頼性に欠け、そのデータを示す団体の信頼性も疑われる

先に述べたとおりです。「価格構成を不自然」とする根拠がずさんです。したがって団体の信頼性が疑われる根拠にもなりません。

 >・活動団体がいわゆる「左翼」の中国・北朝鮮ロビイストで日本の国益に沿うと思われない

なにやら「右翼的な中傷」にも思えますが、どうやら最大の関心事はこの点にあると思われます。そもそも「日本の国益」など一様ではありません。そのことを踏まえずして「日本の国益に沿う」などと一蹴してしまうあたりに当サイトの基本姿勢がうかがえます。

説明の無い政治活動への誘導
 >・アイテムの所持が国策変更への賛同を表すという責任を説明できていない

ですから、【貧困問題の解決に資する政策変更のための活動】という言葉は前面に掲げられていました。「問題点の指摘」を受けて目立たなくされてしまったのです。であればこの批判は「問題点の指摘をした者」に対して向けるべきものでしょう。

 >・政策提案とその支持収集が本来の目的だが貧困の様子を前面に出して説明になっていない

意味がいまひとつ不明ですが、貧困の様子を前面に出さなければならない理由がわかりません。それは募金活動では一定の効果があるのかもしれませんが、もっと根源的な問題をアピール、世論形成、そして政策提案することが本来の目的でありますからそのことは大きな意味を持ちません。

 >・既存政策、代替案の存在を示さず支持すべき政策に選択検討の余地を持たせていない

いわゆる言いがかりです。

提案する政策の妥当性の低さ
 >・提案している政策の根拠が無かったり間違っていたりする

とする根拠がなかったりする。

 >・ここ数十年の国際的なアフリカ支援が台無しになる失敗の可能性について検討されていない

何故でしょうか。詳しい方教えてください。

日本の国益を阻害する可能性
 >・全面債務放棄はアフリカ連合の意思を分裂させ、日本の対国連協働を妨害する

同上。
「対国連協働を妨害する」参考リンク

 >・提言政策は暗黙に貧困国とされる敵性国家北朝鮮への支援に繋がる 参考画像(日テレ)

一番言いたいのはこのことでしょうか?参考画像もまったく意味不明ですが、とにかくこんなサイトでホワイトバンド批判の輪が広がっているとしたら何とも悲しいことです。ブログ界も「ハッタリかまし」が跋扈する世界なのかと暗然としてしまうばかりです。

ホワイトバンド 追加質問集
http://www.hottokenai.jp/ngo/faq.html
非常に丁寧に説明されています。私はとても共感できます。

誤解を恐れずに言えば・・・
たかだか¥300の募金詐欺(万一そうだとしても)と年間数十万円の税金詐欺とどちらがより問題なのだ。
そもそも、営利目的うんぬんというけれども、「憲法9条を守る株式会社」なる会社が「護憲PR」で一大ムーブメントを起こしてくれそうなら「高額な輪ゴム」だとしても私は買っちゃうけど。
その意思に、また支援企業としての取り組みに大いに賛同し支援したいと思うわけです。
いまひとつ根拠薄弱な営利目的批判に賛同することによって「ようやく広く知られつつあった本質的な問題認識」がまたもや失われることになりはしないか、誰の後押しをすることになるのか良く考える必要があります。
営利目的批判に目を奪われすぎて、支援企業として果たしてきた役割あるいは貢献度、このムーブメントが秘めた平和への可能性を忘れてはいけません。
その事を快く思わない者にとっては、とても無視できないほどの力を持ちつつあるということ、そしてそこにはそれを押さえ込もうとする動きが必ず出てくることを踏まえておく必要があります。

大事なことだと思いますね、私は。

>市民運動が高まって、要は政策を引き寄せて先進国の人たちの、
>まあ、先進国自体の政策が変わっていけば、本当に貧困克服のために、
>少しは大きな一歩になるんじゃないかっていう・・・
posted by PPFV at 13:30| Comment(15) | TrackBack(8) | 不定期日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする