弱者を切り捨てる政策にまったく以って同意できかねるのは、そうなったときに何らかの救済策があってしかるべき、それこそ「生活の有事の際の防衛策」が必要と思うからです。長年培われてきて、さらに発展させるべき社会保障制度をこうも簡単に打ち捨てていいものか・・・。
偽者の有事に踊らされて軍事費の増大を許してしまえば、そのしわ寄せは我々の生活にのしかかります。アメリカの実態を見てこの国のすぐそこにある未来を想像しないのはあまりに愚かではないかと思うのです。
《参考記事》〜太字は投稿者による
Our World ビルトッテンからのレター
題名:No.648 沈黙破れば政策は変わる
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/rinen/totten/ow_text.php?A=1&B=657
Date : 2004年9月29日
11月の大統領選挙を前に共和党の全国党大会が開かれたニューヨークでは、「反ブッシュ」をアピールする人々が全米から数十万人集まり、抗議行動をしていた人のうち交通妨害などで1800人以上が逮捕された。友人が電子メールで送ってくれた大会会場の付近を埋め尽くす人々の写真を見るにつけ、ブッシュ政権に追随する小泉政権が、イラク戦争や国内政策を含めてアメリカ国民がブッシュ大統領に「NO」を突きつけている現状にどう反応したかに興味深かったが、私の知る限りでは、これらの抗議行動についてはあまり報道されなかったように思う。
沈黙破れば政策は変わる
共和党大会に乗り込んだ反ブッシュの映画「華氏911」を作ったマイケル・ムーア監督が、共和党議員から批判されブーイングのなか退席するというニュースが日本で報じられたことを考えれば、日本のメディアの報道がブッシュ寄りであることはまちがいない。 日本で数十万人規模のデモ行動が行われた記憶はないが、アメリカでは草の根的に人々が集まり、集会を開いたり反対運動を組織的に行うことがよくある。そこには公民運動が実際に政策を変えてきた歴史が背景にあるが、根底には民主主義においては国民が権力にある者を監視しなければならないということを理解している人々がまだ数多くいるからである。
ところが日本は、かつてよくいわれた「日本の政治は三流、官僚は一流」という言葉にあるように、信頼に足る官僚が国を運営するという時代が長かったためか、抗議運動は浸透していないように見える。
私がアメリカ人であることからよく質問を受ける大統領選挙についてだが、私はブッシュが再選されても、またはケリーが大統領になっても基本的にアメリカは変わらないと思っている。なぜならほとんどのアメリカの大企業は6対4とか7対3といった差はあるにしろ両党に多額の献金を行っている。つまりどちらが政権をとっても政府は大企業よりの政策をとるのだ。国民には2つの選択肢が与えられているように見せかけ、後ろには同じ顔が並んでいるのである。
それでも、選挙が近づくにつれて両党が互いを中傷する記事を目にするにつれて、ブッシュ政権の続投が米国民にどのような状況をもたらすかを考えると暗たんたる思いにとらわれる。
例を上げるとブッシュ政権になってからアメリカの4年制公立大学の学費は35%上昇し、公立校の予算は2004年度だけで94億ドル減額、若者向け職業訓練プログラム予算も全額削除された。教育関連予算が軒並み削減されるなか、もっとも多く予算が増額されたのはいうまでもなく国防費である。
8月末、アメリカの国勢調査局は2003年の貧困人口が前年比130万人増えて、3590万人になったと発表した。米政府が定める貧困ラインとは、4人家族で年収18,810ドル(約206万円)、2人家族で12,015ドル(約132万円)である。そして、全人口の12.5%、8人に1人がこの貧困ライン以下の生活を送っている。
また民間の医療保険はもちろん、65歳以上の公的医療保険や低所得層向け公的医療保険にも加入できない「無保険者」が4500万人、人口の15.6%もいる。そして貧困層3590万人のうち、3分の1は子供たちだというのだ。
小泉首相がパートナーと慕い、政策や方針を模倣している国アメリカの実態がこれである。経済が回復されていると言われる中、貧困層が増大しているのはブッシュ政権が2001年から3回にわたり行った減税が少数の富裕層をさらに富ませ、中間層を貧困におとしいれ、貧困層はさらに貧しくした結果なのである(国民の中間所得は前年から43,318ドルと変わってはいない)。
小泉首相はこのアメリカを唯一の親密な同盟国として、あらゆる手段を使って協力している。軍事面のみならず、政策面でも日本の中間層の世帯の所得を下げ、富裕層との所得格差を広げるために富裕層への減税、相続税・贈与税の減税、社会保障費の削減、大企業のためのさらなる規制緩和と、アメリカがとってきた道をそのまま継承している。
ブッシュ、そして小泉首相がめざす自由な競争社会は人間を幸福にはしない。まだ統計上アメリカほど多くの貧困層がいない日本でも、私たちはそれに気づいている。
貧しい人が貧しさゆえに医療を受けられない、雇用が人件費の安い海外へ流出してしまったために失業する、いくつものパートを掛け持ちしても十分な食事ができないような生活。競争がもたらすのは「互いに助けあうこと」と対極の社会なのである。多くの日本人は競争よりも共存共栄に価値を見いだしているはずだ。
黒人公民権運動で知られるマーチン・ルーサー・キング牧師は「最大の悲劇は敵の暴言ではなく友人の沈黙だ」と言った。日本がアメリカに倣うべきことは、政策を変える力があることを国民が理解し、沈黙を破ることだと思う。