【ホンダ ゼスト 発表】デザイナーはつらかったかも(Response2006/3/2)
http://response.jp/issue/2006/0302/article79889_1.html紹介記事は時間がたつとユーザIDとパスワード(無料会員)の入力を求められるようなので、全文引用します。
ホンダの新型軽自動車『ゼスト』のデザインのベースとなっているのは、04年東京モーターショーに出品したコンセプトカー『PV』だが、一方でディテールを見ると、他メーカーのライバルモデルのデザインを連想させる部分も少なくない。
たとえばフロントマスクのヘッドランプまわりはダイハツの旧型『ムーヴ』や同『MAX』に似ている。Aピラーのデザイン処理はスズキ『ワゴンR』、ウインドウグラフィックはスバル『プレオ』と言った具合だ。これはゼストを見た多くのユーザーが感じることだろう。ホンダとしてはちょっと珍しい現象である。
開発を指揮した本田技術研究所の五十嵐則夫主任研究員は、「良くも悪くも、ホンダは独自性を売りにするメーカーというイメージがありますが、私はゼストを開発するにあたり、そんなに独自性を出すことにこだわらなかった。狙ったのは“万人受け”です」と言い切る。
「デザインについても、他社のモデルにわざと似せたということはありませんが、他社に似せないようにするという意識もありませんでした。こだわったのは、どういうデザインがユーザーに受けるかということ」
「フロントマスクも最初はもっと違うデザインだったのですが、男性ユーザー向けに『もっと威張った雰囲気の、精悍で恐そうな顔つきにしてくれ』とデザイナーに要望しました。デザイナーにとっては辛いこともあったでしょう」(五十嵐氏)
軽自動車としては異例なほど分厚く、骨格のしっかりしたシート、内外装の質感の高さ、シャーシ性能の高さなど、ハードウェアの充実ぶりが際立っているゼスト。一方で、「特色を出し過ぎると“イヤ”と思われる部分が出てくる。それは避けた」(五十嵐氏)といった、アクを取り除くモノづくりは、従来のホンダの路線とはかなり異なる。
このゼスト、軽自動車販売のてこ入れのための一発技なのか、ホンダのクルマ作りの転換を象徴するモデルなのか、ユーザーにとっても興味の湧くところだろう。
今回は久々にクルマ(デザイン)ネタなのですが、記事中非常に気になる(あるいは気に障る)コメントなどありましたので、ご紹介しながら感想を書きます。
あくまで個人的な感想ですが、ホンダユーザーの方には不愉快な話もあるかもしれません。ご了承ください。
正直、最初に写真を見たときにはその「ベタ褒め」の記事とは裏腹に「あまりに陳腐なスタイリング」にがっかりしました。取り立てて目新しいスタイリングでもありません。かといって長く愛されるような普遍的なデザインかというとそういうこともなく率直に言えば数年目にすれば飽きてしまうという近代ホンダデザインの中でも特に出来の悪い方ではないかと思います。
個人的には最低限そのデザインが他車と似てしまってはいけないと思いますし、意図せずして似てしまった場合でも「似ない」ための努力は放棄すべきではないと考えます。
主任研究員氏は、「良くも悪くも、ホンダは独自性を売りにするメーカーというイメージがありますが、私はゼストを開発するにあたり、そんなに独自性を出すことにこだわらなかった。狙ったのは“万人受け”です」と宣言しておられます。
狙ったのは万人受け!と宣言されたことには多少の驚きと少しばかり怒りも感じます。
確かに必ずしも『良いもの』=『ビジネスとして成功するもの』ではないことは多くの事例が証明してしまっていますが、こう宣言されては『良いもの』を目指さない、『売れるが勝ち』ということを公然と宣言してしまっているようでちょっと悲しいですね。
自ら言われているように『良くも悪くも、ホンダは独自性を売りにする』メーカーです。私見を加えて辛口に言い換えさせていただければ、とっくに『ホンダは”万人受け”する独自性を売りにしてビジネスを成長させてきた、ある意味トヨタ的企業に成り下がっています』といったところでしょうか。
もはや『二流メーカーと蔑まされつつもハングリーで輝いていた本田技研』の姿はそこにはないのでしょうか。「万人受け」ではなく「皆に愛される」と語るべきでしょう。でなければモノづくりに対する姿勢が問われます。
男性ユーザー向け=『もっと威張った雰囲気の、精悍で恐そうな顔つきにしてくれ』
この単細胞的な発想にがっかりします。あるいは「万人受け」を狙っての要望ということであれば、なんと単細胞な集団と見くびられた「万人」でしょうか。私は大人の男性(つまりはおっさん)が違和感なく乗れる軽自動車の出現を何十年来望んでいる者ですが、残念ながら未だめぐり合っていません。あえて近い存在をあげれば『ダイハツコペン』ということになりましょうが、間違っても今回の『ホンダゼスト』にその資格はありません。
アクを取り除くモノづくりは、従来のホンダの路線とはかなり異なる。
いやこのスタイリングは悪い意味でホンダ的スタイリングの集大成とも思えます。
「アクを取り除くモノづくり」も決して成功しているとは思えません。
皆に受け入れられやすいスタイリングという点ではクリーンなラインと細かいディテールにも嫌味のない三菱ekワゴンのほうがはるかに優っていると思いますね。
http://www.mitsubishi-motors.co.jp/ek/《参考》本田技研工業:ゼスト
http://www.honda.co.jp/ZEST/